サマラ編 8
車に乗せられ、しばらく走った。
なにも見えない恐怖。
車が止まった。
子供の声が聞こえる。
かぶせられていた袋がとられた。
ここはどこ?
小屋の中にいた。
集落のようで、人々の声がしている。
南国の風が室内を抜けていく。
「お嬢がお目覚めのようだ」
眩しい光。ゆっくり視界が見えていく。
仮面をつけた男たち。いえ、仮面のない男もいる。
「怖い思いをさせてしまったかな?」
仮面の男が言った。若い声。
「ここはどこ?」
「南の島だよ」
十代くらいの若い男の子が言った。
やはり島。潮風を感じる。流れ着いてしまったんだ。
「なぜ海岸に? どこから来たの?」
「アスナルダス王国から舟で……船員が海に落ちてしまって」
「それは災難じゃな」
仮面をつけていない老人が言った。
「食事の用意ができたわよ」
部屋の外から女の声。
木を燃やしている。鉄の鍋、葉っぱや木の容器。
原始的な風景。
子供たちも集まってきた。
学校とか行っていない様子だけど。
大人は仮面をつけている人が少ない。
あまり、恋愛のない環境なのか、すぐに恋に落ち子供が生まれるとか?
まずは、この島について訊ねたかった。
庭で食卓を囲み、話が始まった。
老人の名は、ロイ。彼から島について語られた。
この村は、レジスタンスの村。
ん? つまり抵抗軍? 確かにさらわれた時、銃を持っていたような気がする。
「我々は解放軍だ」
「解放? どういう?」
「島はかつて、大陸間の戦場になっていたんだ」
仮面の男は、ジョーと名乗った。
「ガルシア国とアデルノ国」
仮面の女が言った。名前はソフィー。
「戦争が終わってガルシア国の勝利、軍は国に帰ったけど」
と話すのは、ガロ。仮面はつけていなかった。髭が印象的で、体格のいい戦士というイメージだった。
「今は、島の中央にある大統領府が島の実権を握っている」
仮面をつけたエドが、知的に解説する。
終戦後、ガルシア国軍一部が島に残った。
軍は、勝手にラドルフという青年を大統領にして島を統治しているという。
「僕たちは、軍を追い出し、島を取り戻すために戦っている」
ジョーは、レジスタンスのリーダーのように感じられた。
「私はどうして連れてこられたんだろう?」
その言葉に、一瞬、静まり返った。
子供だけは、陽気に食事を続けている。
ミステリアスな風が吹ていた。
「食事が終わったら村を案内するよ」
ジョーの言葉で沈黙が消えた。
その後は、また楽しい語らいが始まった。
ソフィーが私の部屋を用意してくれた。
高床式で草木の屋根。南国の暮らしを体感しているよう。
「ジョーが、カナートの洞窟に案内してくれる」
「カナート?」
「霊媒師? 占い師でもあるけど」
ちょっと不気味。
「なぜ?」
「ここに来た理由がわかるかも?」
さらにミステリアスな雰囲気。身の安全は大丈夫なの?
今は身を任せるしかない。すべては運命。