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異世界ペルソナーズラブストーリー  作者: 美飾レイ
第一章
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サマラ編 6

広間では、使用人が忙しく動いていた。

カラフルな箱がいっぱい運ばれている。

リボンで装飾されていたり……贈り物?

これは?!!


キララが歩み寄る。

「こちらは、エミリーゼ様への贈り物です」

「エミリーゼ様?」

「はい、フェデルクス王子のお母様、前の王妃です」

どういう?

「第一王妃のエミリーゼ様は、ラスカーダ王国にお住まいで」

「同盟のための人質なんだ」

いつの間にか、フェデルクス王子が立っていた。

「実の母は、和平のためにラスカーダに送られた」

だから人質ということ?

「僕は、年に一度、母に会うためラスカーダへ行くことが許されているんだ」

その準備をしているということ?

この贈り物は、お母様への贈り物?

と、いうことは、ソアラ王妃は第二王妃で、フェデルクス王子との血縁はないということなの!


私もラスカーダ王国に行ってみたい。

「お母様にお会いしたいと思います」

言ってみた。


「では一緒に」

王子は承諾してくれた。


護衛の兵隊に囲まれ、その国に入った。

同盟国・ラスカーダ王国もまた、水源に恵まれ潤っていた。

子供が駆け回り、羊飼いが歩いている道を、馬車で通る。

王子が隣にいる。

年に一度きりしか会えないお母様って、どんな人?

会えばわかる。

詳しくは語らない王子だった。

人質ということは、辛い生活をしているのだろうか?


宮殿の門が開いた。

逃亡を防ぐためか、堀に橋が架かっているが、鎖でつながれ傾いている。

橋が下りて水平になると、馬車が通れる仕組みだ。


宮殿に入り、

同行する馬車から荷物が下ろされる。


「ここがエミリーゼ宮殿でございます」

世話役でアスナルダス王国からの側近・ミルテが出迎えた。

宮殿にお母様の名前がついているなんて、待遇は悪くないのかもしれない。

「フェデルクス様、お元気そうで」

ミルテは笑顔を見せ、頭を下げた。

「母は?」

「はい、この日を楽しみにしておりました」



王妃の部屋に招かれた。

もちろん、王妃は仮面をつけていない。

「王子、一年がどれほど待ち遠しかったか」

「母上」

「こちらにきて、話を聞かせて」


私は、王妃の顔に見惚れていた。

すごく、綺麗な人……。

若くて、美しい……。

この方が、フェデルクス王子のお母様。

ということは、この美しい母の遺伝を受け継いだ王子の顔は……。


「今回は、友人を連れてきた」

紹介された。

「王子のこと、よろしくお願いします」

お母様の承諾を得たような気がする。


食事の席でも王妃と王子を交互に見る私がいた。

母と息子は、一年分の話を語り合っている。

母を思う王子の姿も、たくましい戦闘の場も、王子の顔を想像するとすべてが素敵に思えてしまう。

私は恋をしている。

そして……。

「二人はこれからも一緒に?」

王妃の言葉。

王子はなんというのか?

「彼女さえよければ……」

王子と見つめ合った。

もう、間違いない。

私は、フェデルクス王子と結ばれる。


こうして、面会の期限がすぎ、私たちは第二宮殿に戻った。


先に結婚式をあげたのは、なんとマスキート王子とカレン姫だった。

「わたくしは、この宮殿で王子と幸せに暮らすの」

誇らしげに言った。

私がエミリーゼ宮殿に同行したことを知ったカレン姫は、フェデルクス王子を諦め、マスキート王子に急接近したようだ。

自分のほうが幸せになる。優越感を隠すことなく見せつけてきた。

ご勝手に……と言いたかったけど、『お幸せに』と言ってしまった。



第三宮殿での式が始まる。

急な話なので、宮殿内の人たちのみで祝福することになった。

『僕の代わりに祝福してきて』

フェデルクス王子が公務で来られないため、私が出席した。

華麗なドレスで教会の階段をあがるカレン姫。まだ仮面をつけている。

喜びを隠せない様子。

待っているマスキート王子に手を握られた。

教会の鐘が鳴る。


運命の口づけ。

ふわっとした風が吹いた。


二人の仮面が粒子となって消えていく。

二人の顔がはっきり見えた。


ん?


笑ってはいけない。神聖な儀式なのだから。


でも、二人とも……美男美女とは言えなかった。

やはり、マスキート王子は、ソアラ王妃に似ている。

大きな鼻が印象的。やはり親子。


カレン姫も……おでこが広い。眉毛が濃い。


これが、運命なのだと悟った。

でも、二人とも満足な表情で喜んでいたような気がする。


第二宮殿に戻った私。

「結婚式、どうだった?」

出席しなかったフェデルクス王子に訊かれた。


「とても幸せそうで」

「それはよかった」

「料理も美味しかったです」

そんなことしか話題にならない。


でも、静寂が二人を熱くした。

王子は静かに私を見つめた。

そして、手を握ってきた。

「今度は僕たちの番だね」

「はい」

私たちは、約束を交わした。

東南の空に流れ星が見られる頃、二人は誓いを交わすことを……。


夜、バルコニーに立った。

フェデルクス王子に肩を抱かれた。

「この時期に見られる流れ星」

ロマンスの予感。

遂にその時が来る。

瞳は互いを引き寄せた。


王子の顔がそっと近づいて……。

私は目を閉じた。


そしてキス。

鼓動がうごめき、ハートが満たされる瞬間。

顔が離れる。

吐息がかかる二人の距離は保たれて。


王子の仮面が、端のほうから微粒子化していく。

肌色がはっきりして、顔が見えるようになり、その全容が私の瞳に映る。


母・エミリーゼ王妃の美しさを受け継いでいる。

美男子のフェデルクス王子に、私の心は揺すぶられた。


ん?


王子は真顔だった。


うむ??


私は気がついた。

私の仮面は消えていない。

指先で触れてみる。仮面の手触り。


なぜ?

王子の仮面は消えたのに、私の顔には仮面がついたままなんて。


「僕の運命に、君の運命が重なることはないようだ」

儚さがにじむ声。

「どういう?」

「僕の命は、わずかなようだね」

王子は悲しそうに言った。

意味が理解できない。


「いこうか」

その日、私と王子は二人だけでワインを飲んだ。

詳しくを語らない王子との切ない時間。

決して幸せとは思えない時間を感じたまま、少しの会話を交わして分かれた。




外が騒がしい。

「侵略だ!!」

「戦闘が」

男たちの声。

爆発音。

遠くから煙が上がった。


キララがやってきた。

「お逃げ下さい」

「一体?」

「他国の進軍です。防衛を開始しましたが、戦力に差が」

「王子は、フェデルクス王子は」

「出陣しました。サマラ様を脱出させよと」

「私はここに残ります」

「いけません」

アノアも駆け付けた。

「準備ができています。この国を出てください」

「でも……」

王子の顔を見ることができて、好きになったのに。

これが運命だというの?

「王子の気持ちを大切にしてください。脱出を……」

キララは、荷物をカバンに詰めた。

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