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異世界ペルソナーズラブストーリー  作者: 美飾レイ
第一章
5/32

サマラ編 5

王の間に向かおうとしている。緊張している私。

使用人が大勢行き交う。みんな、王子だと知ると礼をする。


「僕は、子供の頃、母に似ているとい言われていて」

「素敵なお母様なんでしょうね」

「人は、仮面をつけると顔が変わってしまう。子供の頃を連想できないほどに変わってしまった時、母はどう思うか心配で」

「確かに、仮面をつける前と後では、美容整形をしたかのように別人になってしまうという噂も聞いた」


扉の前には護衛が二人。

執事のミカエルが立っていた。

「フェデルクス王子、ご機嫌よろしく、なによりでございます」

「国王と王妃に」

「お待ちかねでございます。どうぞ」


扉は開かれた。

眩しいくらいに明るい室内。

上座に座るアグレスト国王とソアラ王妃。

私はうつむき、顔を見ることができない。やはり、心臓がバクバク。

フェデルクス王子は膝をつき礼をした。

「かたぐるしい挨拶は抜きじゃ。そちらは……」

国王と目が合い、私はサマラ アデューシャと名乗り頭を下げた。

国王は結構高齢のように思えた。


「王妃のソアラです」


王妃の顔を見た。フェデルクス王子のお母様。


は!


王妃の顔は……。


あまり……。


失礼だが、あまり……。


美人とは……。


想像と違って……。


……目が糸のように細く、鼻がまん丸。

少しがっかり……そして、王子の仮面を見た。


「王子の友達を歓迎しよう。今夜は晩餐じゃ」

国王は陽気に言った。



「晩餐の前にお召替えを」

時間があたったので、客室に案内された。

ここも金銀で包まれた豪華な部屋。

入浴が終わったころ、メイドがドレスを持ってきたので試着してみた。

「お似合いでございます」

国王、王妃の前でも恥ずかしくない立ち振る舞いができそう。


しばらくして、使用人・サスワンが来た。

小さな声で話し始めた。宮殿内でのザワメキを聞かせてくれた。

私の姿を見て、若い高官の何名かが興味を示したらしい。

仮面の魔法を解く術、すなわち恋愛に発展させ、口づけ……の流れ。

仮面の男性は、常に恋人を求めている世界。

私の唇を狙っていると……。

高官といえば高貴な方々に違いないけど……。

「王子から離れませんように」

サスワンからの忠告だった。


この宮殿でもラブゲームが進行しているんだと実感。

冒険をしてみようか? 心が揺れた。

こっそり宮殿内を歩いてみた。

貴族風の仮面をつけた男性が現れた。

すでに私のことを知っているようで、

「このような麗しい人にお目にかかれて光栄です」

と、接近してきた。

「運命を信じますか?」

返答に困る。目力に負けそう。


「抜け駆けはよくないな」

別の男性だった。

密かに私を狙う動きが王室側近の間で始まったのか?

「今度、街へ出てみませんか?」

「馬車で案内しますよ」

積極的なのはいいけど、顔が見えないのが残念。というか、不安のほうが大きい。

「ごめんなさい。王子との約束がありますので」

歩き出した。

賭けに出る時ではない。

そう思って逃げ出した。



冒険はここまで。

ドレスを着て部屋を出た。

ダイニングの広間には、国王と王妃、王子と私だけ。

そのために、多くのキャストが、もてなしをしてくれた。

鳥料理が丸ごとテーブルにのっていたり、果物の彩が綺麗だったり。

晩餐は大いに盛り上がった。


仮面の男女の舞踊が始まる。ヒラヒラのついたステッキと光る球を自在に操る芸人。


笑顔がいっぱいで。

王子の顔をチラッとみてみた。

王妃の顔から王子の顔を連想してしまう

今は、この時を楽しもう。振り払った。



一夜明け、王子と第二宮殿に戻った。


「わたくしも、国王とお会いしたかった。いえ、わたくしこそ先に国王にお会いすべき身分だと」

カレン姫に嫌味を言われた。

フェデルクス王子が留守の間、第三宮殿でマスキート王子に取り入っていたはずなのに。

フェデルクス王子が戻るとすぐに、獲物を狙う鷹のように飛んで来た。


でも、それがこの世界のラブゲームかもしれない。

ならば……第三宮殿に行ってみようと思った。

カレン姫に見つからないように。


私はアノアに頼んで、こっそり第三宮殿に足を運んだ。


「ようこそ」

マスキート王子は歓迎してくれた。

アフタヌーンティーに招待された。

緑の芝生にイスとテーブル。

メイドが運んでくるティーとお菓子。

「国王と会ったんだって」

情報がはやい。

「ええ、とても素晴らしい国王と王妃でした」

「僕の両親だからね」

マスキート王子もソアラ王妃と似ているのだろうか?

つい、連想してしまう。

顔を隠した恋愛ゲームならではの期待と不安。

もちろん、外見だけがすべてではないけれど。


「泊まっていくかい?」

「え?」

どういう意味で?

「一晩」

どうしたら?

「この宮殿にも、刺激的な夜が待っているかもしれない」

「カレン姫にも同じことを?」

「彼女は泊まっていったよ。ただ、彼女の中には兄への思いもあるらしく。知っていると思うけど、恋人となり仮面が剥がれた瞬間に、ゲームは終了してしまう。だから、慎重になるんだろうね」

確かに、この男性と結ばれたいと誓いを交わしキスをしたら、仮面は消える。

結果に後悔して不義理をしたら、次に仮面がついた時、どんな顔に変わってしまうのか? それは天罰に等しいかもしれない。

だから、決断には勇気が必要。

それこそが、ペルソナーズラブゲーム。


マスキート王子にお礼を言って帰ることにした。

第二宮殿への帰り道。

内緒で出てきたので、ラモダにのった私と付き人一人。

行きはそうでもなかったけど、砂漠化した大地を通り遠回りしたので、帰り道は日差しが強い。

「休憩しますか?」

視線の先にオアシス発見!!

「少しだけ」


ラモダからおりた瞬間だった。

ラモダが、暴れ始める。

なに!!

付き人がなだめようと必死だ。


「離れてください!!」

付き人の視線を追って下を見た。


双頭のサソリ!!

「この辺に生息するエルゲです。尻尾の針には猛毒が」

足が震えた。


尻尾を振り上げてこちらに迫ってくる。

イヤだ!! こないで!!


その時、

一本の矢が飛んで来た。

エルゲは串刺しとなった。


弓を持って現れた仮面の男。

「あなたは?!」

どこかで???


「闘技場で王子と戦ったハリウスです」

「あの時の」


「どうしてここに?」

「あなたを、お守りに」

え? どういうこと??

「一人で宮殿を出られたと知り、心配になって」


見つめられている。

仮面の奥の瞳。この世界の男性って、瞳が綺麗。


「王子との試合には負けましたけど、あの時から忘れることができずに」

私にことを……。

……これは、告白に近い!!


「盗賊に襲われると危険ですから、はやく宮殿に」

「はい」

私たちはオアシスの水を汲んで、すぐに出発した。

ラモダで先導するハリウスの背中が頼もしく見えていた。


宮殿ではアノアとキララがこっそり出迎えてくれた。

フェデルクス王子には、宮殿を抜け出したことを知られていないらしい。



「体調はどう?」

王子から訊かれた。

「え、ええ、だいぶ良くなりました」

仮病にしてごまかした。



その夜、寝室で眠る私がいる。

物音が……。

アノア? そんなはずはない。

間違いなく気配がする。

重くのしかかるような……。

怖い。

息遣いが……。


少し目を開けた。

仮面が……仮面の男性が、目の前に……。

誰?

声が出ない。


「静かに……あなたに会いに来た」

囁いた。

ハリウスだ!!

忍び込んできたの?


ダメ!!


仮面のまま顔が接近する。

首が動かない。


唇が重なってしまった。

暗闇の中、仮面が粒子となって消えていく。


はぁ!!

目が覚めた。

窓から朝日。


夢だったのね。

ホッとしていた。

第三の男。やはり、気になったからこそ、夢にまで……。


「おはようございます」

アノアの声だった。

「朝食のご用意を」


一人、部屋で朝食をとった。

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