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異世界ペルソナーズラブストーリー  作者: 美飾レイ
第二章
25/32

エレノア編 9

庭園に、新しい噴水ができた。

噴水デザイナーのマキナスとレイチェルの話に私も加わった。

噴水の周囲は花で囲まれ、流れ出る水からも香りが漂いそう。

「見事だ。マキナス」

レイチェルは、エレガントなデザインを絶賛した。

「お気に召していただけたら光栄です」

「ライトが光るんですね」

「夜は、七色の光が水流を照らし、幻想的な景色がお楽しみいただけます」

マキナスが去った後、二人で噴水の絵を描いた。

フラウペンティアのレイチェルは周囲の花を、私は噴水を中心に描き始める。


私の描く速度ははやい。筆が勝手に動いてしまう。まるで魔法を発動してみたいに……

背後からレイチェルが見ている。息がかかりそうなくらいに近い。

「キャンバスから水が零れ落ちそうなくらいリアルだね」

「まだ、自分の能力がわかっていなくて」

「これから二人で、君の才能と能力を高めていこう」

手の動きが止まった。

「二人で?」

もう、拒む理由はない。

「夜、誓いを交わしたい」

レイチェルの瞳は真剣だった。

「こうして、仮面の魔法が解ける日を待っていた」

私の素顔を始めて見る男性は、レイチェル、あなた……



ディナーを済ませて、私は一度部屋に戻った。

エリスに、ドレスを用意してもらった。

「これなどもいかがですか?」

エリスに真珠のネックレスをつけてもらった。

「おきれいですよ」

鏡に映る自分、まだ仮面がついている。

今宵、一人の愛する男性によって、この仮面がはがされる。



これって!!

七色に輝く噴水の前、レイチェルが待っていた。

光はレイチェルにも降り注ぎ、マキナスの言った通り、幻想を創造した。


「レイチェル」

「この日がきたんだね」

「初めて君の描いた絵を見た時から、いや、きっと初めて会った瞬間から僕たちの運命は動き出したんだ」

「私も……あなたを……」

見つめ合った。もう障害はない。このまま愛を受け入れるだけ……

「この場所で、あなたを感じさせて……」

キスの瞬間。

唇は重なった。


仮面は微粒子となり消えていく。

仮面は溶けてなくなるように、肌を露わにした。


レイチェルの素顔。

眩しいくらいの美顔。


ん?

なぜ?

レイチェルの顔は、苦悩に満ちていた。

喜んではいない。


まさか?


私の顔が?


噴水の水面に顔を映した。

私の顔……


仮面が消えていない!!


片方だけ仮面が消えるなんて……


「僕は、君と結ばれる運命ではないらしい」

レイチェルは落胆して言葉を放った。

「そんな」

確かに私はレイチェルを愛している。それが偽りだというの?

「もしかしたら、僕の命は……」

「え? なんて?」

「いや、なんでもない。今夜は部屋に戻ろう」

予想外の展開。

どうして、こんなことに……

噴水の七色の光だけが、微かな希望に思えていた。


翌日からレイチェルの素顔を見ることができた。

メイドは整った顔立ちにうっとりしている。

様々なところで噂話が舞っていた。


レイチェルに誘われ、馬小屋に行くとダニーとケニーもレイチェルの素顔に驚いた。

「仮面が消えたのですね」

と、ダニー。

ただ、私の仮面が消えていないことを気にしているようだったけど、ダニーはなにも言わずに送り出してくれた。


森を馬で散策した。

レイチェルは無理に元気そうに振舞っているようだった。

「君は異国の人だから、仮面が消えるのに時間差があるのかも?」

「そうね」

そうであってほしい。

視線の先に野イチゴ。赤く実っていた。

「採ってあげよう。そのまま待っていて」

私は馬の上にいた。

レイチェルは馬から下りて野イチゴを摘みに向かった。


ん?

黒い煙? 黄色も混ざっている。


うわっ!


「レイチェル!!」

「来ちゃだめだ!!」


羽の音がレイチェルを包み込む。

「毒虫だ!!」


「え!!」


「イタッ」


「レイチェル」

馬を下りようとした。レイチェルを助けないと。

「馬から下りないで!!」

レイチェルは叫んだ。


「逃げて!!」

「だって……」


「僕はもう無理だ」

「いやよ。そんな……」


「はやく、逃げてぇぇーー」

レイチェルの大声に馬は反応し、急加速で走り出した。

どうにもならない。

「レイチェルーーー」

叫び声が森全体に響き渡った。

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