ビニール袋
「・・・おい、これの飼い主はどいつだ?」
入口の鉄格子がゆっくりひらく音にあわせて、クラークの姿が階段にみえた。
自分が右手でにぎったものをみつめ、不機嫌そうに顔をしかめている。
「『飼い主』は知らないけど、出身場所はなんとなく知ってる。 なんていうか、それを素手で捕まえるなんて、あんたか、ジョーくらいだろうな」
ウィルの言葉を無視した男は、口元をおさえ、クラークの手をみる門番の警官に、「これをいれられそうな袋はないか?」ときいている。
「あ、おれ、証拠物押収用のビニール袋なら持ってます」
眼鏡の警察官がポケットからさぐりだしたそれをわたすと、クラークはその中に手を振るようにして握っていたものを落とし込み、きっちりと口をしめた。
「コウモリだ・・・」
ビニール袋をわたされた眼鏡の男が、それをみなにしめすようにして振り返る。
防犯部の若い警察官たちが寄り集まり顔を近づけてそれをみている後ろから、ルイが「あのさあ、」と、いつものようにのんびりした口調で指摘した。
「―― たぶん、ビニールの口はやくあけないと、死ぬんじゃうとおもうよ」
普通に空気が必要なんじゃないかな、と水滴が中についた袋をさししめした。