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マフィンを食べながら
ルイもウィルに目でよばれ、部屋に残ったのはノアとニコルだった。
「どこまできいてます?」
愛嬌のある目がむけられる。
A班の中で、目上への敬意をはらう態度をみせるのは、彼だけだ。
それって『軍』での癖がぬけないだけだろ、とは、ケンの感想だが、ノアはこのまじめな青年らしくていいと思っている。
「クラークに聞いたのは、ジャンの兄弟がからんでるから、やつが役に立つかわからないんで、マークをたてた、ってとこまでだ」
こっちでは、マイクがいないからしかたなくおれがやることにした、と説明したクラークは、いつも通り、面倒そうな態度で、やる気は十分にみえた。
「なら、はなしは早い。 そうだ。 ―― ケンから、うまいマフィンを預かってきてるんで、食べながらはなします」
さっきから、向こうに置かれた紙袋からのいい匂いが気になっていたノアは、髭をなでてごまかしたが、笑顔はおさえられなかった。