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ご指名
「鳴らされる前にすぐ帰るよ。こいつをつれて」
「ぼくの意見は?聞かないの?」
にらみあうようなウィルとサリーナの間にコーヒーのはいったカップを手にしたニコルがからだをわりこませ、いつもの愛嬌のある笑顔でカップをおしつける。
しかたなさそうな顔でうけとった女は、腰の後ろをさぐり、ベルト型のホルスターごと銃をはずすと、弾はいれてないよ、とケンに放り投げた。
「うちにくること自体珍しいのに、なんでまたウィルを連れ出したいんだい?」
紙袋からマフィンをとりだしたルイが、みんなに配りながらチョコ味をサリーナに差し出す。
「 ―― ご指名なんだよ。 あたしが捕まえた変な男が、『弁護士じゃなくてサウス卿のぼっちゃんをよんでほしい』て言ってんだ。 ちょっと、・・・変な感じの男でさ。 写真をみせたいけど、カメラがぶっこわれて撮れなかった」
「その男、なにして捕まったんだ?」
ケンがサリーナのベルトを首にかける。