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来客用札をつけてください
一部分をのこして刈り込んだ髪は赤く染められ、両方の耳は銀色のピアスでふちどられている。
革のジャケットの下は水着のように首にヒモでとめるTシャツで、あちこち破れたデニムにごついブーツ姿は、そのあたりでたむろしている若者とかわらない。
なので、新人の警邏の警察官に、はやく家に帰るよう、何度か声をかけられたことがある。
「あんたたち、 ウチのどっかから、『要請』受けてんのかい?」
写真をつまみあげてルイにきく。
「まあ、いちおうね。クラークの指揮下で」
へえ、と写真をほうると、ウィルにむきなおり、もう一度「ほら、いくよ」と顎をあげた。
「まあ、おちつけ。 『サウス卿のぼっちゃん』を貸し出すのは理由をきいてからだ」
ニコルが立ち上がり、会議室のすみにあるコーヒーメイカーによってゆく。
すると、また部屋のドアが乱暴にひらかれ、紙袋を手にしたケンがサリーナの名を呼んだ。
「―― おい、《お客》の札をつけろって。警報鳴らされるぞ」
こいつ銃持ったままなんだ、とあきれたように紙袋をルイになげわたす。