8/251
お互いの家族の話
「教師。小学校の」
なんだかはにかむように首をかたむける。
「親父さんは?」
こういうのはもっと、班に入った直後とかにきくものなんだろうな。
むかいでナッツをほおばる新人は、すこし嬉しそうな誇らしげな様子でこたえる。
「技術職だよ。 なんか、科学系の。兄貴もソッチの人で、ほんとうは大学でも教えられるくらいなんだけど、小さい子たちににそういう方に興味もってもらいたいって、小学校教師にしたって」
「すごいね。給料でえらばないとこが、おまえの家族って感じする」
本心からの感想に、ザックは困ったように肩をすくめた。
「そういえば、ウィルの姉ちゃんは? 働いてんの?」
会話の方向をかえるために、そっちにふったか、とウィルはコーヒーをすすった。
「あー・・働いては・・いるんだろうな・・」
「なんの仕事?やっぱ、貴族っぽい貢献事業とか?」
本物の『貴族』であるウィルの両親の様子を、頭に浮かべて質問しているのがわかる。
が、それは見当はずれというものだ。