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顔かしな
「おまえの親父さん、こういうのを《魔法》で解決とかできないの?」
わざとらしいなげやりな質問に、ニコルがこどもをたしなめるようにゆびをむけた。
「ウィル、魔法使いの《魔法》は、もっとちがうものだって、さんざん習ったろ? そういや、ジョーは元気か?」
「たぶんね。この前のコウモリのことで電話してから声もきいてないよ」
「コウモリ? それ、なに?」
顔をしかめてルイが二人をふりかえる。
ニコルが説明しかけたとき、部屋の外からさわがしい気配が近づき、蹴りあけられたドアから勢いよく女がはいってきた。
「サウス卿のぼっちゃまってのはあんたのことだよなあ?ウィル」
「 ―― まあ、ぼくの知る限りは」
「ちょっと顔かしな」
「サリーナ。 デートのお誘いは、まにあってるよ」
「あたしもだよ」
部屋にはいりこんだ女は机の上にあふれかえる写真をながめた。




