本を読む男
本をつかってどうやってさがすんだよ、とザックがだれにともなくきき、投げて当たった相手と結婚すんだろ、とケンがこたえる。
「 おまえらにはわかんないだろうけど、出会いの小道具っていうことだよ」
ウィルに指さされた若者二人は顔をみあわせて口をとじた。
「どうやら彼女、『本を読む男』は自分の理想に近いっていう信念をもってたみたいでさ。あのカフェで本を読む男をみかけたら、かならず声をかけることにしてたみたいだ」
「『かならず』って、いっても、そのじいさんがずっとみてたわけじゃないだろ?」
おもわず、というようにジャンが指摘するが、それがさ、とウィルがマークをみやった。交代をうけた男が続きをはなす。
「ジュディがあのカフェで、『本を読む男性』に声をかけるのは店員たちの間でも知れ渡っていたみたいだ。 ためしに、彼女にメッセージを送ったケビン・ハーレイの写真をみてもらったら、彼も元常連で、このカフェで彼女から声をかけられてた。 ―― コナー氏の場合は、数度端末でやりとりしたら、急に、《家族写真をみたい》ってたのまれて、家族である猫との写真をおくったあとには、《本好きな息子や甥はいないのか》ってきかれて、《そんなのいない》と答えたら、急に連絡が減ったってことだ」