いまさら反省
ザックが《新人》としてはいってきてから、もう一年近くたつ。
女性の誘い方は心得ているつもりだが、同性の同僚を誘うのには慣れていない。
一方のザックは、人懐こい性格と素直なところがだれにでもかわいがられるものだから、みんなに気軽にさそわれ、それにこたえてついてゆく。
「いや、ぼくが誘わなくてもザックは困らないだろ?」
なんだか、ひがんでいるような言葉がこぼれる。
「そりゃ困んないけどさ。さびしーじゃん。おれだけウィルに誘われたことないって」
「・・・わるかった」
まっすぐにそんなこと言われると、こちらが謝るしかない。
「気づいてくれてありがと」
眉をあげ、憎らしいようなかわいいような、なんともいえない笑顔がかえる。
弟がいたら、こんな感じなのだろうか?
食堂の店にいけば、店主のビルはもう帰ってしまって、夜勤で勤める若者がコーヒーをいれてくれた。
サービスだとつけてくれたナッツを口に放り込みながら、ザックに質問する。
「そういえば、ザックのお兄さんて、なんの職業ついてるの?」
こちらの家族のことは知られているのに、むこうの家族についてくわしく聞いたことはない。
これも反省点だとナッツをかむ。