目玉の持ち主
そう考えたポールが、犬と棒を手に湿地の水たまりを一つずつかきまわすようにみてまわってゆくと、黒い水につかった枯れ草の中に、白くて丸い『目玉』をみつけた。
とは言っても、つまみあげたそれは、柔らかい素材でできた人工物で、最初はいたずらに使うおもちゃだと思い、犬に投げ与えようとしたところでようやく、 ―― その、瞳の精巧さに、手がとまった。
よくみれば『目玉』は《おもちゃ》とよぶには繊細で、虹彩まで持ち、《瞳》の裏側には、意味深な数字と文字がある。
持ち帰り、《証拠物件》として科学捜査部にまわし、義眼をつくった医療メーカーからたどって、持ち主が判明した。
事故で片眼を失ったデイヴ・ターナーは、レンタルバイク屋をやっていた。
「 じつは、彼の失踪あとすぐに、バイクをかりるはずだった若者が、金は払ってるのに店が開いてないって警察に連絡したんで、警邏組が店とその中の居住部分も確認してるんだ。 店は閉じてたけど、住居部分は鍵もかかってなかったとか、携帯電話も端末も置きっぱなしとか、事件に巻き込まれた可能性が高いってのは、そこでわかってたんだけど、決め手がなかったんで、ほかの失踪者といっしょの扱いになってた」