なぜここに?
すこしまじめすぎるのか、ただ、警察官という仕事に対し、熱心なだけか。
「それってつまり、自分の休日を使ってってことだろう?」
ニコルの感心した声にすこしわらいをうかべた男は、「こっちはさ、発生する事件の件数がちがうんだ」とどこか挑むように視線をかえした。
「 ケンカに泥棒なんて日常茶飯事だし、通報されたら警察官は行かなきゃならない。うちでヒマをもてあましてるヤツなんて一人もいない。事件にもなってないことだから、おれ一人でやればいいのさ」
気になったのはおれだけなんだから、と水に棒をつきたてた。
隣り合う州の警察機構にも連絡をいれたが、指の持ち主は見つからなかった。
つまり、持ち主は痛いのを我慢して治療せずに隠れているか、治療してもらえない状態、または、すでに(いい場合悪い場合ふくめ)、治療とかを必要としない状態にあるか、だ。
そもそも、なぜこの湿地に指だけがあるのか?
切り取られたなら、ほかに捨てる場所などいくらでもあるはずだ。
トイレに流せばこんなふうに見つかることもない。
反面、見つけてほしくてこんな場所に遺棄することはありえない。