相棒は犬
ポールがあたりをみまわしながら、資料にも載せてた発見のきっかけを説明する。
「 初め、犬が人間の指を見つけたのが、三か月まえくらい。 もう原型はとどめてなかったけど、奇跡的に指輪がひっかかってた。平凡なもので、RとCのイニシャルだけ刻まれてた。 すぐに州内の病院に確認したけど、どこの病院にも指を切断したって患者はみあたらなかったんで、指の持ち主は特定できなかった」
指は女性のものだとわかったが、それまでだ。
そのあと湿地内で捜索がつづいたが、特に発見もなく、ほかの部位がみつかることもなかった。
「 どこかに、指を切られた女性がいるだろうってことしかわからなかった」
棒をもって残念そうにいうのに、ニコルがずっと続く草むらをみまわしうなずく。
「しかたないさ。 そこから、目玉までの間、ここの捜索は?」
「おれが、ときどき」
「ひとりで!?」
ポールは肩をすくめた。
「被害届もないし、死体もない。 殺人事件じゃないんだから、人手はさけないよ」
「でも、こんな広いと・・・」
「人じゃないけど相棒はいた。犬を借りたんだ。指を発見した犬を。 そいつといっしょに、時間がとれたときだけやった」
平気で口にする顔をニコルは尊敬をこめてみた。
顔は、ジャンとそれほど似てはいないが、笑い方が似ているかもしれない。
初めて会って、あいさつしてすぐに仕事にとりかかった。
ここまでで弟の話はまだ出してこない。