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湿地の穴
車をとめた場所からすこしゆくと、すぐにその背の高い草の群れがはじまり、『湿地』に入るにはそれをかきわけてはいってゆくしかなく、振り返ると、自分の肩あたりまでの高さの植物を倒して進んできた場所だけが、『道』のように筋になっている。
この草が毎年枯れて倒れて積もってできたふわふわな感触の地面はどこも水気があり、そこかしこに、枯れ草におおわれた《くぼみ》があるので、これを突き刺しながらすすむようにと、ポールに長い棒をわたされた。
その《くぼみ》が、とてもふかい《穴》の場合もあるからだと言っていた。
人間の指がみつかったのは、そんな《穴》のひとつからなのだが、持ち主の身元のわかるような発見はなく、ほかの部分が見つかることもなかったので、コート州の中でもそれほど騒がれる事件だと思われていなかった。
同じ場所で今度は、――
デイヴ・ターナーの目玉が見つかるまでは。