これからのはなし
みんな政府が新しく用意したプレハブ小屋へと移っている。
それだって、トレーラーハウスに比べれば、間取りのあるちゃんとした家だ。
「・・・おふくろが、移りたくないって言うから・・」
「だから、この先はそういうところまで、ポールに代わっておまえがしなくちゃいけないんだ。 困ったら、おれかじいさんに電話しろ。おれだってようやく十五で、まだまだ不安だらけだけど、おまえもすぐ学校を卒業して、次を考えなきゃいけない年になるんだ」
おれは調理の専門学校に行くことにしたから、と、ここではじめてわらったジムは、後ろから名をよばれて、同年代の友達のほうへ行ってしまった。
その日ポールは、酔っぱらって上機嫌な母親を、自分が泊まるホテルのベッドに寝かしつけると、ジャンといっしょに懐かしのトレーラーハウスで寝ると宣言した。
ひさしぶりに並んで歩くと、自分の歩幅にあわせてくれていることに、はじめて気づく。
「あのさあ、・・・」
どこから話したらいいかを考えていたら、ぽん、と頭をたたかれた。
「ジャンが、かあさんと性格があわないのはしょうがないことだし、この先、おまえにかあさんをおしつけようとは、思ってないからな」
「・・・うん」
そんなところからはなしがはじまるとは、思ってもいなかった。