トレーラーハウス仲間
「寮からわざわざかえってきたんだろ?おまえのことが心配で」
「ちがう。あれは、母ちゃんが、泣きながら電話なんかしたから」
「ああ、そっか。おまえのおふくろさん、ちょっと《おおげさ》なところあるもんな。 でもまあ、とにかくポールはおまえが生まれたときから、おまえのことずっと守ってきたんだもんな。 手段はどうあれ。 おかげでおまえは無事にここまで育ったわけだし、こっから先は少しは自分のことは自分でしろよ」
「っはあ!?おれは自分のこともおふくろの面倒もみてるよ!」
「・・・おまえ、おふくろさんと仲悪いだろ?うちの近くの公衆電話で、よく泣きながら電話かけてるのみかけるぜ。 ポールだったら、おふくろさんの愚痴にも付き合うし、ケンカはしないだろ。おまえも外で、おふくろさんの悪口あんま言うなよ。 ―― それと、つぎの学年にあがったら、あんまり調子にのるな。 『警察官』になったら、ポールは前みたいにちょくちょく家に帰ってこられないし、となりの街の奴らと一緒になるからな。あいつらがおまえみたいな性格のやつを、放っておくと思えない。 ―― おれも、できるかぎる力になりたいけど、もうすぐ卒業だし、トレーラーハウス仲間で学校に残るのは、もうおまえだけだ」
トレーラーハウスに残っている家族自体、あと少しなのだ。