いちばんアブナイやつ
「ポールが警察官になっちまうなんて、冗談みたいだな」
一人オレンジジュースをのんでいたジャンにはなしかけてきたのは、むかし、頭突きで鼻血をださせてやったジムだった。
十五歳になった彼はあいかわらず大きな体で、ジャンを見下ろした。
だが、あの時以来、彼にケンカをふっかけられたこともないし、それどころか、いつのまにか会えばあいさつをする仲だ。
隣の椅子にこしかけたジムが、むこうで人に囲まれるポールをさす。
「 おまえは知らないだろうけど、ポールはこの辺でいちばん《アブナイ》やつだ。 わらったままあいてを殴る部類だぜ。 ガキのとき、おまえともめたおれんちに来て、ナイフをおれの首横ぎりぎりに突き立てて、二度とおまえに手を出すなって警告してった。 おやじをむいて、『クレイグ家に近づいたら、即刑務所にぶちこめる証拠をもってるからな』って、おどして出て行ったんだぜ」
「・・・ポールは、そんな・・」
「見た目はおとなしそうだし、大人とはなすときは『いい子』だもんな。 あいつが専門学校の寮にはいるってきいて、心底安心したよ。むかしから、苦手だったんだ。 おれの弟を泣かすなよって会うたびにいってくるから、おまえと遊ぶのもさけてたんだ。 ―― 遊んだらあんなことになって、おれのほうが血が出た分、被害者みたいなもんだぜ」
やっぱりおまえみたいなのと遊ぶんじゃなかったぜ!




