※※ ― おまえのせい ―
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負けたのはお前のせいだからな、と肩を押され、ジャンは尻もちをついた。
「なにすんだよ!」
倒されて地面についた手のひらは土だらけで痛かったけど、とにかくさけんだ。
ここでなにも言い返さなければ、弱虫だと決めつけられてしまう。
「おまえが、あそこで飛び出して逃げたから、おれもつい飛び出しちゃったんだ」
だからおまえのせいだ、とまだ地面に尻と手をつけたジャンをみおろし、あいては大声できめつける。
ジムは自分より歳上で、十歳ぐらいのはずだが、もっと大きく感じた。
「せっかくいっしょに遊んでやったのに、おまえが最後まで鬼にならないなんて、なにかズルしたんだろ? ベンがお前を一回つかまえたって言ってた」
「うそだ!見つかったけど、ベンはさわってないよ!」
「嘘つくな! やっぱり、おまえみたいなのと遊ぶんじゃなかったぜ!」
べっ、といきなり唾をはきかけられた。
顔にとんだ気持ち悪くてくさいそれをぬぐって、あいてをにらみあげる。
「 なんだよ、文句あるのか? おまえなんかこわくないからな。親父に捨てられたんだろ? おまえのかあちゃんだって、もうすぐお前のことなんか捨てて、ちがう男のとこにいくって、みんながいってるからな!」
そんな言葉、聞き終えないうちに、相手の顔めがけてとびあがった。
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「あんときは傑作だったな」
ジャンがそのとき頭突きして鼻血をださせた相手と、同じ歳ぐらいになったとき、兄のポールは《思い出話》としていつもその話をほりかえした。