一晩くらい・・・
クラークが楽しそうに手元の資料をめくる。
「 恋人じゃない。アパートの同じ階の住人で、夫婦喧嘩をして追い出された男だ。 ―― 前からジュディに興味があったらしくて、水曜日の夜に追い出されてすぐに、《もしかして一晩ぐらい泊めてくれえるかもしれない》って期待をいだいて、ドアをノックした」
ジュディは火曜日から木曜日までの休暇をとっていた。
「 ノックしたらドアが開いたので、中に入ってみると、驚いたことに誰もいなくて、ゴミもそのまま。服も散乱していたが、 どうやらもともとそういう生活スタイルの女性だったらしいな。 べつに事件とかじゃなくて、ただの汚い部屋だと判断したその男は、とりあえず彼女のとこに泊まった」
すると、どこかで携帯電話の着信音や、端末機にとどくメッセージの音がする。
「両方とも、ベッドの枕の下に押し込んであったのを、不審には思ったが、そのままにしてさらにもう一泊し、金曜の夜にそろそろ自分の家に戻ろうとしたところに、同僚がやってきてドア前でばったり遭遇」
問い詰められ、ほかの部屋の住民もでてきて警察がよばれた。
不法侵入で逮捕された男は、携帯電話があることに最初から違和感を感じ、もしものことを考え自分の指紋を残さないようにすごし、ベッドにあった携帯と端末には、ふれもしなかった。