国道
「まあ、―― おまえらだって、何度もうちから要請をうけて『ほりあて』してるんだから、直感とか感触とか、あてにならないもんは持ってるだろ? だけど、それをうのみにするなよ。おれたち警察官は、事実しか受け取らないし、証拠が肝心だ。 ―― 『ほりあて』たものは、とりあえずこっちにあげろ」
ケンが手をあげて、おれたちが『ほりあて』した情報は、コート州の警察にじかに渡さず、あんたに渡すのか?とおもしろそうに確認する。
「 ―― いまのところは、そのやりかたでいく」
そっけないその返事にひっかかったジャンが、「『いまのところは』?」と復唱する。
なんだか困ったような笑いを浮かべたクラークが、「おまえ、ほんとにポールから何もきいてないんだな」と鼻先をかいた。
「警察官として口のかたさを見習わないとな。 ―― いいか、ジャン。 おまえの兄貴が『うち』にこの話をもってきたのは、この行方不明者の住居が、コート州の南端からはじまって、最後はクロイス州との境界近くにきているからだ」
資料からまた一枚抜き出し、みんながみえるようにむけた。
赤い点が、地図の下から矢印を上にむけ、《移動》してゆくのが確認できる。
「ポールの見解でゆけば、次はこのクロイス州で、同じような《行方不明事件》がおきるってことだが、―― おれもそう考えてる」
『赤い点』を目に、ジャンの口からうめくような声がもれてしまう。
「・・・国道を・・」
目が合うと、おどけるように眉をあげたクラークは、もっとでかい声がでないのか?とみんなを笑わせてから、「ジャンのいう通り、行方不明者をたどると、『国道』をのぼってきている」と紙につけられた赤い点と矢印をたどってみせ、またウィルに渡す。