№06 ― ある日 いきなり ―
「 メッセージを送ったのは二年以上前で、ボーマーの会社の保険にはいっていた夫人への、手続き上の確認だ」
《本来なら営業の担当者から確認すべきなのだが、その男が休暇で連絡がとれないため、もうしわけないが自分がこうして連絡をした》、とのメッセージが送られていた。
「 夫人は店に電話をされるのを嫌がって保険会社とも主にメッセージで連絡をとりあってたんだが、ボーマーはさすが事務員だけあって、『メッセージでのやりとりが安全とはいいきれないので、会社に電話がほしい』、としめくくってる。 これにファーマー夫人は『わかりました。あとで暇な時間に電話します』とおくりかえしてる。 ―― どっからどうみても、事務的なふつうのやりとりだろう? ところが、いまから四か月前、・・・いきなり、その保険の事務員から、『よーい どん』なんて、へんなメッセージがおくられてきた」
「ボーマーが送り先を間違えたってことはないの?っていうか、彼はこのメッセージをどのくらいの人におくってるわけ?」
ボーマーと夫人の関係をうたがうように、ウィルが質問をはさむ。
「やつの端末を調べたが、このメッセージはファーマー夫人にしか送っていないし、過去に付き合っていたあいてに確認したところでは、そんなの受け取ったっていうのもいなかった。 『よーいどん』に夫人が返したのは、『おひさしぶり。でも、送り先を間違えているようですよ』なんていう親切で常識的なメッセージだ」