感想は忘れてくれ
「 《なぜ》、 ボーマーが彼女にそんなメッセージを送ったのかは、わかっているのですか?」
生真面目なマークの声に「いいや」と軽くかえしてから、説明をつづける。
「 『つながり』はみつかったが、『理由』がみつからねえんだ。 ―― そんで、メッセージにつかわれた文言を調べたら、さっきウィルが言った通り、《古い童謡》とおなじだってことが判明した。 が、そんなの意味がねえだろうって、むこうの連中は首をかしげてる。 ―― おれは、・・・さっきのニコルじゃねえが、なんとなく『バーノルド』を思い出して、気持ち悪くなった。 一人目から次の二人目へ。 二人目から三人目へ、って具合で次々に『よーいどん』っていうのが伝えられて行って、それを《メッセージ》でうけた11人全員が、行方不明になってる。・・・なのに、―― 」
手にした紙に視線をおとして一度だまりこむ。
「―― この11人には、これといった実生活での『つながり』がみあたらない。 だからといって、まったくの見ず知らずってわけでもないところが、おれが気持ち悪く感じるとこなんだが・・・」
紙に印刷された文字をにらむようにしてから、顔をあげた。
「 ま、おれが、どう感じたかは問題じゃないな。いまの感想は忘れてくれていい。 ―― 事実確認だけをしておく。―― 一人目のアラン・ボーマーは、『よーいどん』を送る以前に、実は、個人メッセージをファーマー夫人に送ったことがある。 ウィル、そんな顔するな」
指さされた男は生徒のようにおとなしく片手をあげた。