わざと忘れて?
今度の画像には、送り返されたメッセージと、編集で矢印がかきこまれている。
「これで、ぼうやでもわかるだろう?」
「はじめからこれ送ってくれりゃよかったのに。 それと、『ぼうや』じゃなくて、ザックだよ」
「ってことは、この人たちがつながってたったてことかな?」
首をかたむけたルイに、クラークが、「いまから説明してやる」と、紙の資料をとりあげた。
「 ボーマーが一番最初にあるだろ? やつはある日、クレア・ファーマーに突然、『 きみにむかって よーいどん 』なんてメッセージをおくる。で、そのあと行方をくらませた」
ウィルが、足を組みかえるついでのように手をあげる。
「それはつまり、ボーマーは、いなくなる直前に彼女にメッセージを送ったってこと?」
「だろうな。その日からボーマーの姿をみた人間はいないし、そのメッセージを送ったあとには携帯電話も端末もつかったこんせきはないし、そもそも、両方とも家におきっぱなしだ」
「携帯を持たずに出ていった?これをおくったあとに?」
あきれとおどろきをまぜたその反応は、この部屋で椅子に座る全員に共通した。
クラークぐらいの歳になると、携帯電話をわざと忘れてでかけたい、と思う時があるのだが、ここにつどう若者たちには、まだ、それはわからないようだ。