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なおらないクセ
いそぐように汚い車はでてゆき、後からはいってきた暗い色の車は手前の給油機にとまったまま、運転手はおりてもこない。
なんだか、ジリジリといやな感じがする。
その運転手が、先に出て行った汚い車を、目で追っていた。
つけてるのか?いや、まさか。
給油もせずにそのままスタンドをでていった。
三十代の男性。
首までボタンをとめた暗い色のシャツに、長い髪を後ろでまとめている。
一瞬で確認したそれに、自分を叱る。
自分は今、デートを楽しんでいるところなのだ。
休日までよけいなことを考えてしまうクセをなおさないと、退職までこの仕事を続けられないぞ、と尊敬する刑事にいわれたことを思い出しながら、
―― バイクのエンジンをたちあげた。