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『劇場』を思い起こす
クラークは面白いことをきかれたような笑みをみせてから、首をふる。
「どういう『方面』かなんて、おれはしらん。 だがな、・・・感触としては『バーノルド』を思い起こした」
「そのわけが、これ?」
ウィルはクラークにわたされた紙をふってみせた。
うしろから手をのばしたケンがよみあげる。
「『 おまえにむかって よーいどん にげろやにげろ つかまるな 』?なんだこれ?」
「 おいおい、まてよ・・・。 その言葉の調子、まるで『劇場』で・・・」
ケンのうしろから大きなからだをのりだしたニコルが、あとの言葉をのみこむ。
バーノルド事件の《元凶》は、この街にある『劇場』だった。
さらにいえば、そこで上演されていた『芝居』も事件にふかくかかわっており、事件後その『芝居』は上演中止となったが、施設である『劇場』はいまも観光のかなめとして機能している。