つかえるやつら
クラークはべつにこたえを期待したわけではないのだが、にやけたケンは、こたえてやる。
「 まあ、そう怒るなよ。 たしかにうちの班はいま、ちょい《不調》だけど、そのかわり《つかえる警邏》のやつらがここにいるんだから」
会議室の半分をしめる人員を手でしめした。
A班の班長である男が、自分が留守の間に、なにか『問題』が起こったら、《警邏隊》に出てほしいと手をまわしておいたのだ。
警備官のなかでも接近戦をもっとも得意とする人間を集め、上流階級が催すパーティーなどに警備の補助として呼ばれるために、《常識》を身に着けた者しかいないので、《どこにでもつかえる連中》だ。
「 ―― つかえるかどうかは、実際うごいてみないとわかりませんけどね」
クラークより先に口にしたのは、当の《警邏》たちの班長であるマーク・リーだった。
言おうとした言葉をとられてしまった警察官は、すこし困ったような表情をみせ、「期待はしてるからな」と早口でいってから、丸めた資料をひらいたが、また、それに目を落とすこともなくはなしはじめる。
暗記してんならその紙いらねえだろ、というケンの言葉は無視された。