起きろ!
警察署とちがう、きれいで広い会議室の細長い《机》にこしかけるクラークは、紙の資料をめくると、こんどはそこにかかれたことを読みあげるようにつづけた。
「 ボーマーの無断欠勤が続いたため、同僚が家を訪問。 アパートメントの鍵はかかっておらず、荒らされた後もなし。 『衝動的に行方をくらましたのかもしれない』ってのは、家を訪れた同僚の言葉だ。数週間前からすこし様子がおかしかったっていうのは、よくある《まえふり》ってやつだ。なあ?」
「ああ、そうだな」
クラークに視線をふられたジャンが、どうでもいいようにうなずく。
パン!
丸めた資料で手を打った音に、余裕をもっておかれた椅子に座る全員が、顔をあげた。
警備会社の会議室ってのは音響効果もいいな、と眉をあげた男が注目を楽しむ。
「 いいか? おれは、やる気のない学生相手の教師役なんざ、する気はねえぞ。 ほんとならマイクにやらせたかったんだが、あいつが見越したみたいに休暇をとって逃げていったから、しかたなくおれがここにきたんだ」
「そのわりには、ビルの店でくつろいでたじゃねえか」
ケンが食堂兼休憩所のひろい空間をおとずれたとき、その真ん中に建つ小さな店の店主と楽し気にはなしこみながら、生ジュースのカップを手にするクラークをみかけた。