№04 ― 正式な《要請》 ―
手にした書類に目をおとすでもなく、はなしは始まった。
「 四か月前に行方不明になったアラン・ボーマーは保険会社の事務員だ。勤務態度はまじめで私生活は独身のひとりぐらしを堪能中。 まあ、すこし恋人をとりかえる期間がみじかいってくらいで、それほどひどいってほどでもなし。 だよな?」
「どうしてぼくに同意を求めるんだよ」
視線をうけたウィルは納得いかないというようにクラークをみかえす。
「心当たりがなかったなら、それでいい」
うすくわらうイアン・クラークは、重犯罪部の部長で、警備官とも何度も組んできた男だ。
ジャンが兄に会った数日後、正式な書類がこの州の警察にまわり、ガーバディ警備会社に《要請》がはいった。
内容は、南に隣接するコート州の行方不明者捜索に、強硬隊A班が協力すること。
本来、このクロイス州にあるガーバディ警備会社の《警察要請部》は、クロイス州の警察に協力するためのものであって、隣のコート州の警察機構からは、《要請》をうけることはない。
だが、ベインの口添えによって、ポールの望み通り、ジャンの所属する強硬A班がはいることになり、体裁をたもつために、コート州の警察官と警備官A班の『つなぎ役』として、この州の警察官のなかで、警備官とも仕事をすることの多い重犯罪部の男がかりだされたわけだが、 ―― 当人は、納得していない。




