次はこないから
「じゃあ、・・『つながってる』ってのは、ベインが気づいたのか?」
「いや、おれたちが気づいて、ベインに相談した」
「どういう新興宗教だ?」
運ばれてきたコーヒーを礼をいってうけとる弟をながめた兄は、眉をよせるようにわらった。
ジャンがいちばんむかつく笑い方だ。
「まあな。『宗教』だって確証を得たら、あんがい早くかたづくんじゃないかと思って相談したんだが・・・、ベインが張ってる網にはかかってないみたいで、特定はできなかった。 ただ、普通の行方不明者とも違うから、《バーノルド事件》で『ほりあて』に動いたおまえのとこなら、いい働きをしてくれるだろうってベインがすすめるんで、《副班長》のおまえに、話しをきいてもらおうと思ったんだ」
「それなら、そう言ってくれりゃあ、会社内でそのままミーティングできたのに」
「まだ正式な書類が整ってないんだ。・・・それに、―― ひさしぶりに弟に会うのに、仕事の話だけってのもさびしいからな」
テーブルに肘をついてこちらをみる顔に、いつものからかうような表情がうかんでいる。
「 仕事いがいのはなしはないよ。おふくろとはこの前あったばっかだし」
まだ熱いコーヒーをいかりにまかせて一気にあおり、「書類が整ってから正式なかたちできてくれよ」と席を立つことにした。
仕事のはなしなら電話で済んだろう、と言いたいのをこらえ、つけたした。
「 ―― いっとくけど、こんな急に呼び出されても、 次は、来ないからな」
指をつきつけて背をむけた。