優秀な兄
見送ったケンが「 兄弟って、成長すんとあんな感じになんのか?」とニコルをみた。
「 まあ、いろいろあるさ。 おれは妹だし、仲は悪くないはずだけど、それでも、思い出について、むこうと見解がちがう場合も多々ある。 ジャンのところは十歳ぐらい離れてるっていってたから、いろいろ理由があるんだろ。 ―― でも、ここでのあの面倒見のよさってのは、きっとその兄さんの影響なんだろうな」
本人はきっと認めないだろうけど、と笑いながらケンがようやくとじおえたファイルをとりあげる。
「この州じゃなくて、となりの州に住んでるんだろ?おふくろさんと」
ケンの情報に、ニコルはおどろいた。
「そうなのか? 『ちょっと離れて住んでる』とはきいてたけど、隣の州なのか」
「あいつがママと仲良くないってのはみんな知ってるから、あんまつっこんできかねえもんな」
「おまえ以外はな。 ―― で? ほかに知ってることは?」
「南の州で警察官やってるって。 ほかできいたところじゃ、かなり優秀な刑事」
「そりゃまた。―― 自慢したっていいのにな」
納得しかねるように大柄な男は首をふる。
いいことをおもいついたようにケンが指を鳴らした。
「よし、じゃあ今日はジャンのあとをつけて、その兄貴の顔でもおがんでやろうぜ」
「これの片付けがおわったらな」
いいながらニコルがその机の持ち主であるケンに、つぎの引き出しをあけるようにうながした。