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もう忘れてる
恥ずかしがるようにうつむいたその首に腕をまわし、そのまま母親のようにやさしく額にキスをおくる。
「ご両親だって、あなたのこと愛してるわ」
「うん、わかってる」
彼は家族をほめられるのがうれしいのだ。
自分の家族を恋人がけなすことがあるなんて、考えてみたこともない種類の人間。
「 おじいさまがつくった『アルバム』、いっしょにみたいわ」
「ほんと?うん。みてほしいな。ぼくにもかわいいときがあったんだって」
「いまでもじゅうぶん、『かわいい』けど」
本心からそう思っているのをあらわすように、彼の顔をかくす髪をなであげて、目をのぞきこみながら鼻先にキス。
お返しは、このごろようやくもらえるようになった紳士的なキス。
「ねえ、 ―― わたしたち、もうすこし、深くさぐりあってもいいんじゃないかしら?」
彼のシャツのボタンを指先でつまんだジュディは、もう、きっかけとなった『メッセージ』のことなど、忘れていた。