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計画的で用意周到
「はじめは、・・・張り切ったんだぜ。 ま、オムツの取り換えだって、やわらかい飯食べさせるのだって、うまかったし、おまえもかわいかったし」
言って、指先をこちらへふる。
気のせいか、ポールの目が、潤んでいいるようにみえた。
「・・・もう、いいよ。 めんどうになって、どっか街中のそのへんに、おれを置いてきたってはなしだろ?」
ジャンは、もう、はなしをきりあげたかった。
「バカ言うな。おれだぜ?―― もっと計画的で、用意周到だ」
ポールはそれをわざと誇るように顎をうわむけた。
「 ―― たしかにおまえはかわいかった。 けど、・・・おれだってまだ子どもだ。 宿題はいいとして、友達と遊びたかったし、―― 家のことを忘れたいときもあった・・・」
『家』には、ポールを頼りにしはじめている『母親』と、ポールがつきっきりで面倒をみてやらなければならない『弟』が待っている。




