心配な預け先
嫌な表現、場面あり。ご注意を
「 そこから、 ―― おれがマリアをむかえにいくっていう、習慣がはじまったんだ。 おまえを抱いて、街のあちこちの酒場とか、あいつがいそうな場所に行っちまう。 ほんとはもう、さがす相手はとっくにはかの街に行ってるってのに、おまえを連れてりゃ、父親である男に会えるとおもってたんだ」
おまえもいい迷惑だったな、と指先の煙草をふった。
「・・・ようやく、ほかの大人が心配してくれて、役所から人がきた。 マリアは、その人のおかげですこし自分をとりもどして、おれは学校から帰っても、お前を抱いたおふくろを、さがしにいかなくて済むようになった。 三人とも、平和だったときだ」
言って、じっくりとすいつけた煙草を灰皿におしつけ、すぐに新しいのを指先にはさむ。
「 ―― おまえが、一歳をすぎたとき、マリアが働きだした。 近くの『友達』におまえを預けるっていってな。 おれはその『友達』ってのが信用できなかった。 あたりのトレーラーハウスの中でも一番きたない家で、いつ行っても男たちがうろついてて、その女が家で《客》をとってるってのは、みんなが知ってる『噂話』だった。 マリアはそれを知ってるのか知らないのか、その女に金をはらって、お前の面倒をみさせるって言うんだ。 もちろん、おれが、やめた方がいいっていうのは無視された。 おまえはしばらくその女に預けられて、ひさんな扱いをうけ、マリアが仕事を早退して迎えにいったときに、 ―― 檻に入れらてるおまえをみつけて、救い出された」
「・・・おぼえてねえなあ・・・」
だろうな、と新しい煙草をくわえ火をつけた。




