準備する
まだ知り合って二か月もたっていないが、じつは、すでにジュディは《結婚》を考えている。
そんなこと口にしたらこの繊細な相手がおどろいてしりごみしそうなので、まだ口にする気はないが、《準備》をするならば早い方がいいかもしれない。
「 ―― その別荘に、おじいさまはいらっしゃるの?」
家族に会うチャンスならば、のがさないほうがいいだろう。
ソファで本を読む男の膝のうえにこしかける。
「いや、祖父はもう亡くなってていないんだ。祖母はいるけど、屋敷・・・ し、『施設』のほうに世話になってるから、実家には両親だけだよ。えっと、きみのほうは?」
あせって話題を変えたいのが伝わり、微笑んでそれにのることにした。
「うちは父も母も実家と疎遠になってるから、孫としてかわいがられたことはないの。だからそこに《おじいさま》がいるなら、 ぜひ、あなたが小さかった頃のおはなしを、ききたいっておもって」
「残念だな。祖父にぜひ会ってほしかったよ。 ああ、でも、ぼくのアルバムがあるはずだ。祖父が撮ってくれた写真ばかりでつくられたのが」
「すてき。愛されてたのね」
「うん。両親がいそがしかったから、代わりみたいに、すごくかわいがってくれたんだ」