サリーナのうわさ
だが、あの日、サリーナといっしょにもどった《警備官》たちと、地下房で信じられないものを目の当たりにした三人は、( ほんとはまだノアの庇護のもとにいたはずなのに )いつのまにか、特製の『サリーナ班』になってしまっていた。
調べているのは、あの《コウモリ》がからむ失踪事件で、これはほんとうは『防犯部』に、直にかかわりはないので、同じ課内でも、ほかのみんなには知らされていない事件だ。
知っているのは、クラークやモンローといった『上』の人間ばかりで、おなじような刑事仲間はもちろん、旧知の制服仲間にも、もらすことはできない。
「好奇心旺盛なやつから、なにをしてるんだって、しつこくきかれます」
眼鏡をかけた男が、ため息をつきながら渡された書類の確認をする。
「あたしの《護衛》してるって、言っときな」
サリーナが、三人のむかいでPCをひらき、《モス》が冒険家として活躍する動画をながめる。
「説得力ないでしょ。闘牛を、素手で倒すっていう女の『護衛』なんて」
さきほど、『突入の先頭』を命じられた男が、半分わらいながら手にした紙をふる。
「ばかねえ。そんな噂を間にうけてんの? 素手じゃないわよ。 コレットは、折り畳み式のナイフで牛をたおしたの」
男ふたりにはさまれた女が、自分がなしえたことのようにいいきかせる。