№02 ― 『きみにむかって よーい どん』 ―
そのメッセージがとどいたとき、ジュディは眉をひそめた。
携帯端末器のメッセージリンクでやりとりしてたのは、もうだいぶまえで、彼とはここ一年ほど連絡をとっていない。
それは、むこうが歳をごまかしていたとか、自分の写真をぜんぜん送ってこないとか、そういったことをのぞいても、信用できそうにない、と思えることがあったからだ。
その男から、メッセージが届いている。
確かめずに消去してしまったほうがいい。
そう思ったのに、つい、確認してしまった。
『 きみにむかって よーい どん 』
「なに、これ?」
つい口にだしてしまった言葉に、むこうで本をよんでいた男が、どうしたの?というように眉をあげてみせた。
「なんでもない。変なメッセージが届いただけ」
「端末に?」
本をとじようとする相手にあわてて手をふってみせる。
「ずっと前にやり取りしてたんだけど、むこうは若くてすぐに寝てくれる相手をさがしてただけで、わたしはちょっと、年上の友達がほしかったの。すぐにまちがいに気づいて、連絡するのはやめたわ。むこうもすぐ違う相手をみつけたみたいだったし」
読みたくない相手からのメッセージはそのまま消去できるし、ブロックするプログラムをとりいれることも考えたが、なんとなくそのままにしてしまったのだ。