実体と魂と縄張りと
「 そこから、・・・いまの説明でいくと、《背中鬼》は、ボーマーを『伝って』いって、被害者を十一人はだしてる。 ―― もう一度きみに聞きたいんだけど、《背中鬼》は、端末機に、『 入れるし、出られる 』 って、ことなのかな? えっと、さっき言った実体として?」
どうも感覚がつかめない、とマークが組んだ腕をもぞもぞと動かす。
「 まあ、あんたたちの感覚でいうと、変なことなんだろうな。 ―― おれたちは、《実体》と《魂》を、別々にすることができるし、それが当然だから。 要は、端末を『移った』ら、『移った』先の、端末の持ち主を《餌》にできるんだ。 《餌》を、じっさいにとりこむためには、《実体化》して、自分の『なわばり』に、追い込めばいい。 そのほうが簡単だから、・・・だからきっと・・・ジュディももう、あの穴にひきこまれてる・・・」
くやしそうな顔の《モス》を、珍し気にながめたウィルが、気になったんだけど、と手をあげた。
「 きみのジュディの『端末』からは、次のコナーさんに《メッセージ》が出されたけど、それを彼が見る前に、『端末』は、鍋におちて壊れたわけだ。 ―― その場合はさ、《背中鬼》はどうなるわけ? まさか、鍋でゆでられることもないだろ?」
最後につけくわえられたそれに、あんたらおれたちのことバカだと思ってるな? と、不機嫌な声がかえる。