写って 移る
説明しようとした《コウモリ》は、ルイがにやけているのをめにして、「とにかく、」と、はなしを進めることにした。
「 ―― このときに、この映像と『波長』が合った『背中鬼』が、この中にうつったんだ」
「でも、どこにもそれらしきモノはうつってなかったぞ」
ニコルがPCのとまった画面をさす。
「 そりゃ撮ったばかりのをすぐにみたら、ドアップの背中鬼がみえたと思うけど、とっくにここにはいないよ。 ・・・でも、やつはまだ力が弱かったから、これには実体はうつせなかったはずだ。魂だけがうつって・・・そうだ、うん。 まず《モス》は、帰ったらこの映像を、家にあるPCに移すだろう?」
目をむけられたニコルは、そうだろうな、とうなずく
「 そうするとさ、《背中鬼》も、そっちに『移れる』わけだ」
「・・・・・なに? あー、おまえ、それは単語がちがうだろ。 PCに映像を《移》したら、PCはそれを《映す》になる」
「あ~、だからそうじゃねえって」
ニコルの指摘をふりはらうように《モス》になった《コウモリ》は、手を振る。
「 おれは間違ってねえよ。 いいか? 《背中鬼》は、まずカメラの映像につかまったから、そこへ『移る』。 その映像が、PCに『移され』れば、背中鬼もいっしょにPCに『移る』んだ。 意味がわかったか?」
じれったそうにまわりにいる警備官たちをみまわす。