№25 ― 冒険家の映像 ―
「ほら、これだ」
マークがゆびさし、PCにあげられたその映像を、囲んだ男たちがのぞきこむ。
そこには、あの《湿地》を紹介する『冒険家』のモスがいた。
『 ってことで、この湿地、ひとりでくると、『あぶない』って言い伝えがあるらしいんだ。まあ、《伝え》られたのはぼくじゃなくて、友達なんだけど。 ヤツ、彼保険会社に勤めてるからさ。ぼくがこういう仕事だから、ぜったいはいった方がいいってうるさいんだよね。 まあ、実はこんど結婚するから、たしかにはいったほうがいいとは思うけど。 ・・・とにかく、その彼のおじいさんがむかし、この《湿地》で、ひどいめにあったっていうんだよ。 ここに住む『背中鬼』っていう鬼は、ひとりでここに来た人間をおいかけて、《湿地の穴》に引きずり込むんだってさ。 まあ、たしかに足場がわるい 』
カメラが足元を映し、たおれた草をふむと水がしみだすのをみせる。
『 このとおりだし、ぼくが持ってるこの棒、足をだした先に、その『穴』がないかどうか、確認するために持ってるんだ。 もし、その『穴』に落ちたら、―― っぎゃあああああ!! 』
いきなり叫び声があがり、カメラが曇った空を映す。
すぐに
『 なーんて。びっくりした? その『背中鬼』に引きずり込まれちゃうかな。 ああ、でもここの水、なんだかすっごく冷たいから、凍え死ぬのが先かもね 』
気楽に笑っていたのが、ふいにわらいを消す。




