おまえらを信用してない
「おれの疑いは晴れたってこと?」
「『晴れた』? いえ。判断するのはあくまで警察官のほうですし、ぼくらは『よけいな道草をせずに』、行方不明の人たちを探すことと、《背中鬼》を探し出すことにだけ集中していますから」
穏やかでいて、はっきりとした口調に、へえ、と眉をあげたポールが握りあった手を左手でたたいてからはなす。
「 ―― どうやら、思ったより、頼りになりそうだなあ」
だろう?とすぐにケンが反応した。
「かわいい弟の周りを『いろいろ調べ』ると『変人』っていうのしか出てこなかったんだろ?」
そりゃ心配になるよなあ、と顎をあげてわらってみせた。
すると、ポールが、はじめて顔から笑みをけした。
「 ―― そのとおりだ。 いっとくが、おれはおまえらを信用してない」
きいていたクラークも、その顔を確認してしまうほど、感情もなにもない声だった。
「この事件に、ジャンを巻き込むつもりなんてまったくなかったんだ。 ・・・とにかく、あいつを絶対に《湿地》に連れて行くな。 ―― これを破ったら、おれは、おまえら全員を、死ぬまでゆるさない」
ポールの声には、さきほどまでのふざけたような余裕はなく、その顔は少しも笑っていなかった。




