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『鬼は犬がきらい』
いいや、と首をふった男は、眼をそらさないままききかえす。
「《背中鬼》を信じてたのに、よく一人で《湿地》の捜索に行ったもんだね」
「ひとりじゃない。犬がいっしょだったからな。 ―― あの本に書いてあっただろ? 『鬼はみんな犬が嫌い』なんだ」
「あんな怪しげな本、どこで手にいれたのかな?」
「古本屋だよ」
「まさか、コナー氏の古本屋で?」
「ああ、ジュディがメッセージを送った人?そうかもな」
どうでもよさそうに手をふった。
「無事にみつかったんだろ?関係ない・・・。おっと、まさか、そのコナーさんも《鬼》の仲間だと疑ってるのか? そんでおれが、その《鬼》たちの手先で、これを仕組んでるって? なるほどな。これは《バーノルド事件》の、延長ってわけだ」
手を打って、驚いたような、それでいて楽しそうな顔をポールはまわりにむけた。




