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もういない
「『いない』とは、もう種族がいないという意味だ」
低いジョーの声は、シスターの叫んだ「 ジョー・コーネルと お友達がかえります 」という宣言にかきけされた。
耳の奥が痛いとおもったら、あの湿地の教会に戻っていた。
ジョーもウィルもすでに入ってきた扉をくぐり外に出ている。
あわてて追ったザックは、「『種族がいない』って、きこえた」とジョーの背中のシャツをひっぱる。
肩越しにふりかえった元聖父は、歩きながら「いない」とくりかえした。
「 シスターの言っていた『能力』には、種族の繁栄度も入ってるんだろう。《コウモリ》たちはもう、かなり前からその数を減らしてきている。 おれが、いまの職についたときにはもう、あと数個体で終わりだときかされた」
「・・すうこたい? それって、少ないって意味?」
「この世界で二という数は、少ないだろう?」
「・・・・」
ザックはこたえなかったが、ジョーのシャツをつかんだままだった。