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扉の中
「ほら、あそこよ」
先頭のシスターがあげた声で見れば、いきなり突きあたりとなった濡れてひかるその岩壁に、今まで見たものより大型の、錆びた鉄の扉が現れた。
「 ディゥ ッテ 」
ザックの耳に、ところどころだけはいる老女の発音は、《バーノルド事件》を思い出させ、寒さとは別の 寒気 に、おそわれる。
グギィ―――
鈍い音をひびかせて鉄の扉が勝手にひらく。
「 ―― まさか、そのままはいんの?」
おもわずザックは足をとめた。
自分たちはいま、銃器も武器になるような警棒すら持っていない。
だが、前に出たウィルが上着をあげ、腰の後ろに押し込んだ古い銃を黙ってしめした。
すこし安心して、その背中のうしろにつく。
シスターは、歩いているときの勢いのまま入っていった。
すぐあとにジョーがはいる。
ウィルとザックが入る寸前で、「なんてこと!」と老女の叫び声が響いた。