まえは魔女
「なんだろ・・・へんなかんじだな・・」
シスターから頬をはなしたウィルがなにか聞きたそうにジョーをみる。
「そりゃ、あなたが生まれたときに、わたしがお祝いで《祝福》を贈りにいったからでしょうよ。ふつうはそのあと、贈った《魔女》には、会わないものだしね」
「まじょ!?」
叫んだのは、かがんでシスターに腕をまわしたザックだった。
小柄な老女が大声で笑い、パイにはへんなもんなんか入ってないよ、とザックに頬をすりよせた。
「だいたい、いまはもう《魔女》じゃないものさ」
驚きながらもふつうに抱擁したザックをほめるようにシスターは若者の肩をたたく。
「シスターは、ここの教会を任されている《むこうのシスター》だ。 もとは《魔女》だったが、いまは《人間》として名前を与えられて、ここにいる」
だが、自分と同じように『聖堂教』には正式に認められていない、とジョーが説明し、シスターは笑った。
「あたしゃ、父親が《精霊》だったもんだから、ちょっと《普通の魔女》たちともちがう種類になっちゃってね。 自分じゃそこが気に入ってるんだけど、裁判で『特別枠』っていうのに決められて、配置をいっつも、勝手に決められてきたのよ」
「『配置』? 《魔女》にそんなのあんの?」
ザックの疑問に、人間だと『言葉』が違うのかしら、と老女がジョーをみあげた。




