ほんとは照れ屋
「 あいつはポールのこと、犯人の仲間だと思ってんだぜ? おれは、あんなやつの言うことは信用できないし、あいつのほうこそ、あやしいよ」
「それって、なにを根拠に?」
「・・え?」
ウィルはザックの手から空になった瓶をとりあげる。
「 なあ、ザック ―― おれたちは、『警察官』の《補助》をしてる。 『警察官』って言うのは、『証拠』がなければなにもできないし、疑うにも『根拠』が必要だろ?」
「まあ・・うん・・」
「おまえが、《コウモリ》のことを頭から信じないのは勝手だけど、『捜査』に、思い込みは禁物だって、前にマイクも言ってたよ。 この事件はただでさえ、いまだに死体さえ出ていない。だから、おれたちは《行方不明の人たち》を、どうにかみつけられるような、たしかな『手がかり』や『証拠』をさがしあてなきゃならない。 ―― この意味、わかるか?」
「・・うん。・・・たしかにちょっと、頭に血が上ってたせいで、決めてかかってたかも・・・。ちゃんと、 『仕事』するよ」
「わかってるならいいよ。 ―― なんだよジョー、飲み終わったなら返してくるよ」
ジョーの手からもぎとった瓶も持って店の方にむかうその背に、ザックがおごってもらった礼をいう。
「ほらみてよ、あれってウィルが照れてるんだぜ」
首をすこしかたむけ、片手をあげる後ろ姿は、彼が子どものころに農場を手伝って帰るとき、トムの声にこたえる姿と同じだった。
休憩おわり