№21 ― このスタンドで ―
仕事のはなしに ちょっともどります。
コート州にはいり、すぐに寄った給油スタンドでジュースを飲みながら、「ここだよ」と邪魔な前髪をはらう男がジョーをみた。
「 サリーナはここで、まず、ポールがはいってくるのをみた。 おりてきた彼に道をきかれて、つぎに、ポールをおっていた《コウモリ》が、はいってきたわけだ」
「ああ。やつが言うには、ジュディの端末から《背中鬼》までたどって、次の日にはもう《湿地》をみにいってるし、車も盗んできてる」
「もうターナーのところには警察官も立ってなかっただろうし、鍵だって家にあったんだから車を盗むのは簡単だったろうな。そこからずっと、湿地の上をとんだり、ポールのあとをつけてたってことか。 なんていうか、・・・やつがポールを追ったのだって、ジュディが心配だったからだろ?《コウモリ》って、そんなふうに人間のことを気にするわけ?」
「いや。あの《コウモリ》は少々変わってるな。 あいつらは『力』がないんで自力で《ターナー》の家を探すのに、かなりの人間に道をきいてたどり着いたって言ってたから、そこでこのごろ、《コウモリ》の噂がすこし出回ったのかもな。 きっと必死だったんだろう。 人間が好きだと言ったのも、その場しのぎの嘘ではなさそうだ」
二人のやりとりをきいていたザックが「なあ、ふたりとも」とおこった声をだした。
「あんなやつの言うこと、まさか信じてるのかよ?」
ジュースの空瓶をふりながら二人をみくらべて言った。




