あやまる
「 ・・・おれより、ウィルのほうが、 そりゃ、知ってると思うよ・・・」
ぼそぼそと後ろの席からザックの声がした。
若いぶん、いいたいことも多いだろうと、ジョーはルームミラーをのぞきこむ。
脱力したように前をむいた若者は、「ごめん」と力のない声のまま謝った。
となりで指をこすりあわせる動きがとまる。
「・・・そういうのは、自分できくからって言えばよかったよ。 ―― ウィルにききたかったのは、おれみたいなのが、相手にしてもらえるかってことだよ。 ・・・背中をおしてほしかっただけなんだ。はじめからそう言えばよかったかも・・・」
シートから身をおこし、からだを後ろにひねったウィルが、決まりわるそうにジョーをみてから言った。
「また、 ―― そういうふうに先に謝られると、こっちが子どもみたいになるだろ。―― おれのほうが悪かったよ。たしかに、あれは、・・・おれから伝えることじゃないかも・・・。 ごめん」
聞き間違いでなければ、こどものころと同じ素直さで、《ぼっちゃま》が謝った。




