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ケンカ中
―― だがそれも、変わってゆく
前の席で口をとざした二人は、どうやらケンカをしているらしい。
あのウィルが、仕事仲間とケンカ?
ジョーはにやけそうな口元をおさえて言ってみた。
「 ―― そういえば、カラスのときは、おまえらみんなケンカしてて、活動停止処分だったな」
「あれは、魔法使いのせいだろ?」
むきになったようにウィルが振り返る。
「今回はちがうようだな」
「だからあ、おまえには関係ないから黙ってろよ」
腹立たし気なウィルの言葉に、眉をよせたザックが「いいよべつに」とエンジンをかける。
「ジョーはこういうのに公平そうだから聞いてくれよ。 ―― おれが、いま好きな人のことウィルに相談したんだ。 そしたら、いきなり、その人の『悪口』を、おれに伝えた」
「『悪口』じゃない。 あれは、本当のことだから言ったんだ」
「だから、もういいって」
「よくないんだ。 おれは、相談されたから伝えたほうがいいと思って、」
「だから! ―― そういうの、よけいなんだよ」
ザックの気持ちをあらわすような運転で、車は急角度で駐車場から道に出た。